2009年5月21日木曜日

複雑な日

今日、21日は日本では裁判員制度がスタートした。ニュースのインタビューではもし選出されたらという問いに対して、多くの方が「不安」を表したり、「欠席」の希望を述べたりしていた。昨夜までの私も彼らに同意していた。これまで裁判の傍聴に通っていたわけでもない私が、急に人を裁くことについて考えなければいけない立場に立たされても、正しい判断など到底できないと思ったからである。

それなのに私は、たった1日で考えを変えてしまったのである。きっかけは、昨日、偶然友人から借りた「なぜ君は絶望と闘えたのか~本村洋の3300日」著:門田隆将を拝読したことによる。ひとは問題に立ち向かうことよりも目を背けることのほうが楽なことをしっている。そしてその問題が自分から遠ければ遠いほど、後者を選ぶかもしれない。これまで、被害者の誰もがニュースで流れる事件が自分の身近に起こるなど思いもせずに、ある日突然被害者になってしまったのだと思う。本村さんもそのなかの一人であり、彼は被害者になってしまったことで、自分の受けた理不尽な法に対して、自分や家族のため、そして日本の将来のために立ち向かった。その行為に対して、私も日本人の一人としてお礼を述べたいと思う。

この本により、自分がどう考えるように至ったか、うまくこの場でまとめることはできないが、もし私が裁判員に選ばれた場合は出席しようという思いに変わった。そして、与えられた情況に対して真剣に、そしてお互いの将来について自分なりの考えを持たなければいけないと感じた。ひとは自分さえ幸せならばよいとはならないし、ひとりで生きているわけではないのだから、様々なひとやコミュニティー、社会について考える必要はあるだろう。

本書の中に掲載された加害者の手紙の中に「誰がゆるし、誰が私を裁くのか・・そんな人物はこの世にいないのだ。法廷の守護官たち・・裁判官、サツ、弁護士、検事たち、、。私を裁けるものは、この世におらず、、」という内容があった。確かに魂になった後、裁けるのは神様しかいないかもしれない。しかし、ひととして生きている間は、同じひとが裁くことで、社会が成り立っているのだと思った。

さて、話がここでまとまれば、私にとって複雑な日にはならなかった。しかし、今日の私は朝からとても複雑な心境だった。それは、私の家で雇っているドライバーについてである。

道路事情や運転マナーが劣悪なマラウイでは、多くの外国人がドライバーを雇って日々生活をしている。私の家では車が一台しかないこともあり、毎朝、ドライバーに夫をオフィスまで送ってもらった後、昼間は私が利用し、夕方またドライバーに車を彼のオフィスまで届けてもらっている。その夕方オフィスに届けるまでの間に、ドライバーが私たちの車を無断で私用に使っていたのである。

以前から少し怪しいところがあったため、今月からランダムに家からオフィスまでの走行距離をチェックしたところ、夫は毎夜オフィスから家まで走行距離7kmで帰宅してくるのだが、ドライバーが家からオフィスにいくまでの走行距離がバラバラであった。最初に問いただしたとき、「道が渋滞だったために違う道に変えた」と答えたため、「急いでオフィスに戻る必要はないから同じ道を使って」と注意した。しかしその後も不正は続き、月曜日の走行距離を示して、「同じ道を使ってといったのに、なぜ5kmオーバーしたの?」と聞いたところ、「大型トレーラーが道を塞いでいた」という。

疑いながら仕事を続けてもらうのはお互いにとってよくないので、水曜日の朝、どこの道をトレーラーが塞いでいたのか、どのように大回りをしたのか実際走ってもらった。しかし、大回りでオーバーしたのはたったの1km。残りの4kmはどこを走ったのか聞いても「わからない」の一点張り。一度は話を終え、その日の午後にもう一度聞いたが、それでもだんまり。仕方がないので今朝、夫が会社についてからもう一度話してもらった。そして受けた連絡は車を無断で私用したことを認めたとのこと。

会社から家に戻ってきたドライバーに対して私はどういう行動をとればいいのか、何が一番の解決策なのか、家の中で悩んでいた。というのが今日の出来事である。最終的に私がとった行動は、彼はクリスチャンで彼らなりの生き方があり、しかし日本人である私たちと一緒に働いているので、 私が納得することも大切だと思い、彼の通う教会に連れて行き、神父さんには悪いが神父さんの前で話し合わせてもらった。

どんな行動、どんな判断がベストかなんて誰もわからないけど、ひとがひとについて話し合い、相手を理解しようと努力すること、どうすれば問題の解決に近づくのか、話し合う手段は大切なことだと思った。そして、今日からスタートした裁判員制度は、ひとについて真剣に考え、真剣に向き合う機会を与えていることは確かだろう。制度自体も現在の決定がベストとは誰も思っていないだろうし、制度についての課題ができたらその都度話し合っていくのだろう。ちょっと堅くなってしまったが、すっきりしたので、今日もぐっすり眠ろう(-。-)y-゜゜゜

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